関西大学化学生命工学部化学物質工学科

内容

炭化環境浄化用膜の創製

1. 炭化水素選択透過除去膜の研究

 芳香族、ハロゲン化炭化水素は、洗浄用溶剤として大量に使用され、廃棄された結果、地下水や土壌を汚染し、河川、湖沼に流入し水道水源汚染や海洋環境汚染を引き起こし、人体や生物への影響が懸念され、社会的に大きな問題になりつつある。そこで、水中に溶存しているこれら溶剤を除去する方法を確立することは、人間生活の健康維持の確保や自然環境の保全の上で重要な課題である。
 本研究では、操作の簡便性、連続処理性、省エネルギー性などの観点から水中汚染溶剤を高確率に除去することを目的として、これら炭化水素類に親和性の高いアルキルメタクリレート系、ジメチルシロキサン系、置換アセチレン系の材料から共重合や架橋などによって炭化水素系溶剤の選択透過除去膜の科学的、物理的構造設計を行っている。また、高分子膜表面の撥水化剤や選択的吸着剤の添加に伴う炭化水素類の選択除去性能を向上させるため、これら撥水化剤と吸着剤の合成を行っている。膜構造解析と透過分離特性との関係から、透過分離機構を解明し、さらに高い選択透過膜の創製の指針を得るべく努力をしている。

2. 上り坂輸送膜による廃水処理

 膜を介しての濃度差に基づく受動輸送や膜内にキャリヤーを有する促進輸送では、膜の両側の濃度が等しくなった時点で物質輸送は停止する。一方、膜内にキャリヤーが存在し、膜を介して共役エネルギーが付与されるとき、物質の濃度勾配に逆らって濃度の低い側から高い側に上り輸送が起こる。
 本研究では、陽イオン交換基としてスルホン酸基をもつ陽イオン交換膜と陰イオン交換基として四級アンモニウム基を有する陰イオン交換膜を用いて排水中のアンモニウムイオン、硝酸イオンを上り坂輸送させることにより硝酸アンモニウムとして再生資源としての有効利用を目指している。また、新しい試みとして陽イオンおよび陰イオン交換膜を並列にセットし、前者の膜でアンモニウムを生成させることも検討している。この方法が、効率よく稼動すれば、廃水中のイオン性物質の濃縮除去が可能になると同時に、不用成分の有効成分としての再利用が可能になる。上記の単独イオン交換膜を用いる系と2種のイオン交換膜を用いる系の上り坂輸送の輸送機構を明らかにし、さらに高い上り坂輸送膜の創製と輸送システムの構築を検討している。







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