関西大学化学生命工学部化学物質工学科

内容

刺激応答性ゲル

1. 抗原抗体応答性ゲル膜の創製

 抗原−抗体反応は生体内の特異な反応としてしられているが、この抗原−抗体結合を高分子ヒドロゲル内の可逆的な架橋構造に利用する刺激応答性高分子ヒドロゲルを調整した。このヒドロゲルにフリーの抗原を作用すると、フリーの抗原のほうが高分子化抗原より抗体との相互作用が強く、抗原の抗体反応が起こり、架橋密度の減少によりヒドロゲルは膨張する。しかし、この系で抗原濃度を減少させても再び収縮はしない。そこで、抗原−抗体結合をヒドロゲル内で可逆的な架橋点として形成させるため、semi−IPN構造を導入すると、可逆性抗原−抗体semi−IPNヒドロゲルが調製できる。このsemi−IPNヒドロゲル膜の抗原に対する可逆応答性を利用した物質透過の制御が検討されつつあり、今後ドラッグデリバリーシステムへの応用などに展開する予定である。

2. 分子インプリント高分子ゲルの創製

 分子インプリント法は特定の分子を特異的に認識しうるテンプレートを作成する方法として、近年種々の分野で注目され、盛んに研究されつつある。本研究では生体分子と環境ホルモン分子を高分子ゲル内にインプリントする高分子ゲルについて調整している。生体分子としては、肝ガン細胞中に存在するa−フェトプロテイン (AFP) を、また環境ホルモン分子としてはビスフェノールA (BisA) をインプリント分子として選んだ。前者のAFPを認識するコンカナバリンA (ConA) とタンパク部分を認識するanti−AFPが用いられている。AFPの存在下でビニル化ConA、ビニル化anti−AFPをアクリルアミド (AAm) 、メチレンビスアクリルアミド (MBAAm) とともに架橋重合し、高分子ゲルを生成させた後、AFPを洗浄、除去することによって、AFPインプリント高分子ゲルを得る。後者のBisAを認識する分子としてはシクロデキストリン (CD) を選び、ビニル化CDをBisA存在下でAAm、MBAAmと架橋重合し、BisAを洗い流してBisAインプリント高分子CDゲルを調整する。これらゲルのAFP、BisAに対する認識挙動をノンインプリントゲルと比較検討すると同時に、AFP量、BisA量応答性などを詳細に検討しつつある。AFPインプリントゲルは、診断薬として、BisAインプリントゲルは環境ホルモン測定用としての応用が考えられ、それらの可能性が検討されつつある。また、このようなインプリント法による高分子ゲルは、さらに多くの応用面が考えられ、それについても検討していく予定である。







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